記帳代行の料金相場|仕訳数だけで比べると、たいてい高くつきます
2026.09.01・平澤 建
結論から書きます。記帳代行の料金は仕訳数で決まると説明されますが、実際に金額を動かしているのは「資料の渡し方」と「どこまでやってもらうか」です。仕訳数だけを見て安いところに決めると、資料整理の手間が自社に残り、月次が締まるのが2ヶ月遅れ、結局は高くつきます。
この記事では、まず相場の実額を出典つきで並べ、そのうえで「どこを削れば安くなり、どこを削ってはいけないか」を切り分けます。
まず相場:仕訳数ベースの目安
公開されている料金表とメディアの調査を並べると、おおむね次のレンジに収まります。
| 月間の仕訳数 | 月額の目安 |
|---|---|
| 〜50仕訳 | 5,000円 〜 10,000円 |
| 〜200仕訳 | 20,000円 〜 35,000円 |
| 税務顧問契約とセット | 法人で月額40,000円程度〜/個人事業主で月額30,000円程度〜 |
| 時間制(経理代行) | 1時間あたり2,000円 〜 3,000円 |
出典:Leapal会計事務所「税理士の記帳代行の費用相場」(2026年3月)、弥生「記帳代行の料金相場」(2026年1月)、TOKIUM「記帳代行サービス比較9選」(2025年11月)。いずれも2026年9月1日時点で確認。
ここまでは、他のどのサイトにも書いてある内容です。問題はこの先です。
同じ仕訳数でも、見積もりが2倍違う理由
相見積もりを取ると、同じ仕訳数を伝えたのに金額が倍近く違うことがあります。差を生んでいるのは、次の3つです。
1. 資料の渡し方(ここが最大の変数)
紙の領収書を封筒にまとめて郵送するのと、ネットバンキング・クレジットカード・決済サービスがすべてクラウド会計に自動連携されている状態とでは、先方の作業量がまったく違います。
後者なら、代行側の仕事は「自動で取り込まれた明細に勘定科目を当てて、例外だけ確認する」に縮みます。前者は、日付順に並べ替えるところから人手です。仕訳数が同じでも、この差だけで見積もりは変わります。
2. 「入力だけ」か「月次を締める」か
入力だけなら安く、月次決算(在庫・未払・減価償却の計上まで含めて、その月の損益を確定させること)まで頼むと上がります。安い見積もりは、たいてい入力だけです。
ここを混同したまま契約すると、「毎月お金は払っているのに、自分の会社が儲かっているかは決算まで分からない」という状態になります。
3. 決算料が別建てになっている
月額だけを見て比較すると外します。決算・申告の料金は別で、月額の4〜6ヶ月分が請求されることが多くあります。比較するなら「月額×12+決算料」の年額にそろえてください。
料金を下げる正攻法は「仕訳を減らす」ではなく「仕訳を作らせない」
値下げ交渉より効くのは、代行側が手で打つ仕訳をゼロに近づけることです。順番は決まっています。
- 事業用の銀行口座とクレジットカードを、個人のものと完全に分ける。混ざっていると、1件ずつ「これは事業か個人か」の判断が発生します。ここが一番の原因です。
- その口座・カードをクラウド会計に連携する。明細が自動で取り込まれ、規則的な取引には自動で科目が当たります。
- 支払い方法を集約する。現金払いを減らし、同じカードに寄せるほど例外が減ります。
- 領収書はその場でスマホ撮影。月末にまとめて封筒に入れる運用をやめるだけで、資料整理の工数が消えます。
この4つをやると、仕訳数そのものは変わらないのに見積もりが下がります。理由は単純で、代行側の作業が「判断」から「確認」に変わるからです。
自社でやるか、外注するかの分かれ目
感覚ではなく、計算で決めます。
自社対応のコスト = 担当者の時間単価 × 月の作業時間 + 会計ソフト利用料
時間単価は、給与だけでなく社会保険料の会社負担(給与のおおむね15%前後)を足した金額で計算してください。月給30万円の担当者なら、実質は約34.5万円。所定労働160時間で割ると、時間単価はおよそ2,160円です。
この人が月8時間を記帳に使っているなら、自社対応のコストはおよそ月17,000円+ソフト代です(推定)。仕訳数200件で外注が月2〜3.5万円なら、金額だけ見れば自社のほうが安く見えます。
ただし、この計算には2つ抜けています。
- 担当者が辞めたら止まる。1人しか分かっていない経理は、事業の継続リスクです。
- その8時間で本来やれたこと。請求漏れの回収や、入金遅れの督促に回せば、8時間で17,000円以上を生むケースは珍しくありません。
逆に、外注してもコストが下がらないパターンもはっきりしています。資料の準備を自社でやり続けている場合です。封筒に詰めて送る作業が残っているなら、それは記帳を外注したのではなく、入力だけを外注しています。
見積もりを取るときに必ず聞く5つの質問
- 月額に決算・申告は含まれますか。含まれない場合、年額でいくらですか。
- 月次はいつ締まりますか。(翌月10日なのか、翌々月なのかで、経営判断に使えるかどうかが変わります)
- 仕訳数が想定を超えたら、料金はどう変わりますか。
- 資料はどの形で渡せば一番安くなりますか。
- 月次の数字について、説明の時間はありますか。それは料金に含まれますか。
特に5番目です。ここで「別料金です」「メールで送るだけです」と返ってきた場合、その見積もりは入力の対価であって、経営の相談相手の対価ではありません。それが悪いという話ではなく、期待する側がそこを分かって契約すればいい、というだけの話です。
安さで選ぶと何が起きるか
私たちはtaXelの開発にあたって、税理士の先生方に9件のヒアリングを重ねてきました。そこで一貫して聞こえてきたのが「顧問料3万円の壁」です。
月額3万円前後の契約では、記帳のチェックと申告書の作成で稼働が埋まります。数字を見て「ここが危ない」「この手を打ちましょう」と踏み込むところまでは、料金の構造上どうしても届かない。先生の姿勢の問題ではなく、業界の値付けが持っている構造です。
つまり、記帳代行の料金を限界まで下げるほど、月次の説明はついてこなくなります。これは避けられないトレードオフなので、方針を決めておきましょう。
- 数字は自分で読む、と決めるなら——記帳は安いところに出して、浮いた分を自分が読む時間に回す。
- 相談相手が欲しいなら——記帳の単価ではなく、月次面談の中身で選ぶ。安い見積もりは最初から比較対象に入れない。
どちらでも構いません。決めていないまま安いところに出して、後から「何も言ってくれない」と不満が出るのが一番もったいない結果です。
執筆
平澤 建(ひらさわ たける)
taXel 代表。中小企業向けにKPI経営の伴走支援とEC運用支援を行っています。 税理士の先生方へのヒアリングを重ね、いただいた要望をそのまま機能にする形でtaXelを開発しています。
※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。料金は事務所・サービスごとに異なります。個別の税務判断については、顧問税理士にご相談ください。筆者は税理士ではありません。
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