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税理士向け 顧問先対応

社長が最後まで聞く月次報告は「1枚目」で決まる|先生方の現場資料から残った5原則

2026.09.30・平澤 建

試算表を渡して説明したのに、社長の反応が薄い。質問も出ない。翌月も同じ。多くの先生が一度は経験している場面だと思います。

私たちは税理士事務所向けのツール(taXel)を作るにあたって、先生方へのヒアリングを10回重ね、ある先生からは実際に社長への説明で使っている資料も見せていただきました。そこで分かったのは、社長が最後まで聞く資料には共通の作り方があるということです。中身の正確さではなく、並べ方と削り方の話です。

この記事では、先生方の現場資料と指摘から残った作り方を、そのまま使える形でまとめます。

結論:1枚目に結論、科目は丸める、選択肢は1つ

先に全体像です。

社長が最後まで聞く月次報告の5原則
① 1枚目は「掴み」:業績サマリーの前に、危機感を持たせる数字を1つだけ置く
② 順番は「危機感 → 助言 → 具体提案」:この順を崩さない
③ 科目は丸める:決算書の科目名のまま並べない
④ 数字は図にして、必ず比較と並べる:単独の数字は良し悪しが伝わらない
⑤ 提案は1つに絞る:選択肢を並べると決まらない

以下、それぞれ先生方の指摘とあわせて説明します。

1. 1枚目に「掴み」を置く。結論は一言で

ある先生に、taXelが作った分析レポートを見ていただいたときのことです。論理と文章については「十分に見せられる」という評価をいただいた一方で、最大の宿題として返ってきたのが「最初の1枚が弱い」という指摘でした。

先生の説明はこうです。社長はたいてい結論しか聞かない。だから、業績サマリーの表を見せる前に、パッと見て「これはまずい」と分かる図か数字を1枚置く必要がある。そして結論は一言にする。

順番も具体的でした。①数字で危機感を持ってもらう → ②アドバイス → ③具体的な提案。多くの月次報告は、この①を飛ばして、いきなり試算表の説明から入っています。社長にとっては「先月の数字の確認」でしかなく、聞く理由がないまま進んでしまうのです。

「掴み」に使える数字の例

掴みの数字一言の例
手元資金の月数(現預金 ÷ 月の固定費)「このままだと、来年の今ごろ手元資金が2ヶ月分を切ります」
売上の取引先集中度「売上の7割が1社です。この1社が止まると、3ヶ月で資金が尽きます」
前年同月比の粗利額「売上は横ばいですが、粗利は前年より月80万円減っています」

※ 表中の数値は一言の型を示すための例で、特定の顧問先のものではありません。

2. 科目は丸める。決算書の並びのまま見せない

別の日に、同じ先生からチャットでいただいた指摘があります。要旨は次の3つでした。

印象的だったのは、この先生が所属するグループ規模の事務所でも、社長向けの資料では科目数と数字をできるだけ丸めて説明していると話していたことです。一人の先生の工夫ではなく、規模の大きな事務所でも同じやり方をしている、ということです。

丸め方の例を挙げます。

社長に見せる行決算書・試算表の科目
人件費役員報酬 + 給与 + 賞与 + 法定福利費
変動費売上原価 + 外注費 + 売上に連動する仕入関連
固定費人件費 + 地代家賃 + 減価償却費 + リース料 + 保険料 など
その他の経費通信費・旅費交通費・雑費など、金額の小さい科目

元の科目は消すのではなく、「内訳」として後ろのページに回します。聞かれたら出せる状態にしておけば十分です。

3. 数字は図にして、必ず「比較」と並べる

ある先生が実際に社長への説明で使っている資料を見せていただくと、図は次の5つでした。

図社長のどの問いに答えるか
損益の積み上げ棒(3期比較)売上に対して、人件費と利益がどう変わったか
貸借対照表の積み上げ棒(3期比較)現金・売掛金・借入のバランスがどう変わったか
月別売上の折れ線(前年と重ねる)今年は去年より上か下か、どの月がずれたか
売上累計の折れ線(前年と重ねる)今期の着地は前期に届きそうか
月次推移表(前年比・増減額つき)どの費目が前年から動いたか

5つとも、単独の数字ではなく「前年」や「過去3期」と並べている点が共通しています。先生からは「販管費の内訳を単体で見せても、良いのか悪いのか社長には分からない。前年や同業と比べて初めて危機感が出る」という指摘もありました。

同業と比べるときにも一工夫あります。業界平均は黒字の会社と赤字の会社をまとめた数字なので、そのまま比べても社長には響きにくい。黒字企業の平均と比べるほうが「うちはどこが足りないか」が伝わる、というのも先生からいただいた指摘です。

4. 提案は1つに絞る。3人の先生が同じことを言った

ヒアリングの中で、別々の3人の先生から独立に同じ指摘を受けたことがあります。「選択肢が多すぎる。優先順位をつけて絞ってほしい」。

打ち手を5つ並べると、資料としては丁寧に見えます。しかし社長の頭の中では「どれからやればいいのか」が決まらず、結局どれも動きません。「今月はこれ1つ」と言い切り、残りは「次の候補」として小さく載せる。3人とも、事前のすり合わせなしに同じ結論に行き着いていました。

5. 「ツール」ではなく「説明資料」として事務所に入れる

最後は、資料を作る仕組みを事務所に入れるときの話です。

ある先生からは、こんな助言をいただきました。事務所の代表に「このツールどうですか」と聞いても、まず「いらない」と言われる。ところが「若手の職員が社長に説明するための資料になる」「若手の教育に使える」と伝えると、「入れてみるか」に変わる、というのです。

これは事務所の中の話ですが、社長への説明にもそのまま当てはまります。社長が知りたいのは分析の方法ではなく、「で、うちは何をすればいいのか」です。資料を作るのは手段で、説明が伝わることが目的です。先ほどの5原則は、すべてこの目的から逆算しています。

なお、言いにくい数字(値上げの必要性や、資金が細っている事実)を伝える場面の工夫については、顧問料を上げる入口で「資料に言わせる」という考え方を書いています。

送る前のチェックリスト(7項目)

#確認すること
11枚目に、危機感を持たせる数字が1つだけ載っているか
2その数字の結論が一言(1行)で書かれているか
3順番が「危機感 → 助言 → 具体提案」になっているか
4科目が丸められているか(人件費・変動費・固定費)
5すべての数字に比較対象(前年・過去3期・黒字企業平均)が付いているか
6提案が1つに絞られているか
7細かい科目は「内訳」として後ろに回っているか

まとめ:明日からの3手

  1. 次の月次報告の1枚目に、数字を1つだけ置く。手元資金の月数が一番作りやすく、どの会社でも使えます。
  2. 人件費の行を1本にまとめる。役員報酬・給与・賞与・法定福利費を合算するだけで、表の行数が大きく減ります。
  3. 提案を1つに絞って、残りは「次の候補」に回す。社長が「じゃあそれをやろう」と言える形で終えましょう。

taXelは、この作り方をそのまま画面に落としています。決算書を読み込むと、「現状 → 課題 → 対案 → 効果の計算」の順に並んだ説明用の資料ができあがります。先生方の指摘を一つずつ機能にしてきた結果です。

関連記事:顧問先の解約を防ぐには/MAS監査の始め方/顧問料を上げる入口

執筆

平澤 建(ひらさわ たける)

taXel 代表。中小企業向けにKPI経営の伴走支援とEC運用支援を行っています。 税理士の先生方へのヒアリングを重ね、いただいた要望をそのまま機能にする形でtaXelを開発しています。

※ 本記事に記載したヒアリングの内容は、先生方のお名前・事務所名を伏せたうえで、いただいた指摘の要旨をまとめたものです。特定の事務所の成果を示すものではありません。筆者は税理士ではありません。業務範囲・料金設定に関する法令上のご判断は、所属税理士会等にご確認ください。

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