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社長・経理向け ツール選び

電子帳簿保存法の対応ソフト|買う前に「自社に要るか」を5分で判定する

2026.09.24・平澤 建

「電子帳簿保存法 対応 ソフト」で検索すると、比較記事が並びます。15選、14選、12選。どれも製品を横に並べて機能を比べる構成です。

ただ、その前に決めることが1つあります。自社にソフトが必要なのか、必要ないのか。国税庁の要件を読むと、多くの中小企業はソフトを入れなくても法律上の要件を満たせます。この判定を飛ばして比較表から入ると、要らないものを月額で買うことになります。

この記事は、先に判定してから選ぶ順番で書きます。判定は5分で終わります。

結論を先に

ステップ1:自社がどこに当てはまるかを判定する

電子で受け取った請求書・領収書などのデータは、電子のまま保存するのが原則です。制度そのものの説明は電子取引データ保存の記事にまとめてあるので、ここでは判定だけを扱います。

上から順に見て、当てはまったところで止めてください。

#条件判定
12年(期)前の売上高が5,000万円以下で、税務調査時にデータのダウンロードの求めに応じられる検索要件は不要。ソフトなしで運用できる
2データを出力した書面を、取引年月日その他の日付および取引先ごとに整理して提示・提出できる(令和6年1月1日以後の取引)検索要件は不要。売上規模の条件なし
31にも2にも当てはまらない検索要件(取引年月日・取引金額・取引先で探せること等)が必要
出典:国税庁「電子取引データを適切に保存できていますか?」「ご存じですか?電子取引データの保存方法」「電子帳簿保存法一問一答」(いずれも国税庁サイト掲載のPDF。2026年9月24日閲覧)。
判定の基準期間や適用関係には細かい条件があります。自社の判定は、必ず顧問税理士か所轄税務署に確認してください。

1または2に当てはまるなら、必要な作業はこれだけです。

  1. 電子取引データを保存するフォルダを1つ決める(クラウドストレージで構いません)
  2. ファイル名を「日付_取引先_金額」の形でそろえる(例:20260924_◯◯商事_330000.pdf)
  3. 改ざん防止のため、事務処理規程を作って運用する。国税庁がWord形式のサンプルを公開しているので、自社名を入れて使えます

費用はゼロです。ここまでで足りる会社が、実際にはかなりあります。

ステップ2:それでもソフトを入れる理由は「探す時間」

では、なぜソフトが売れているのか。理由は法律ではなく運用です。

ファイル名ルールは、件数が増えると必ず崩れます。入力する人が複数いると表記がそろわなくなり、「◯◯商事」と「〇〇商事㈱」が混在します。そして崩れたことに気づくのは、税務調査で特定の請求書を探しているときです。

ソフトを入れる判断は、この式で考えるのが分かりやすいはずです。

年間で浮く時間 × 時給 > 年額のソフト代 なら買う。
例:月100件の証憑を扱う会社で、1件あたり1分の手作業(リネーム・保存・後から探す手間の合計)が消えるとします。年間で100件×12ヶ月×1分=20時間。時給2,000円なら年4万円分です。月額3,000円(年3.6万円)のソフトなら、ほぼ拮抗します。
※ 1件1分・時給2,000円は説明のために置いた仮定値です。自社の実数に置き換えてください。

この式を書くと、月30件程度の会社がソフトを買っても回収できないことが見えます。逆に月300件を超えると、人力の運用はまず続きません。

ステップ3:選ぶときに見る4点

1. JIIMA認証は「どの区分か」まで見る

JIIMA(公益社団法人 日本文書情報マネジメント協会)の認証は、電帳法の要件を満たすソフトを区分ごとに認証する制度です。2026年9月時点で5区分あります。

認証区分対象
電帳法スキャナ保存ソフト紙の書類をスキャンして保存する場合
電子帳簿ソフト国税関係帳簿の作成・保存(「優良な電子帳簿」の機能要件)
電子取引ソフト電子でやり取りした取引情報の保存(法第7条)
電子書類ソフト自社で作成し紙で発行した書類の控えを電子保存する場合
デジタルシームレスソフト令和7年度改正で新設。請求書等のデータを自動保存し帳簿に自動連携する仕組みに対応

出典:JIIMA「JIIMA認証制度」(2026年9月24日閲覧)。

ここが実務の落とし穴です。比較記事の多くは「JIIMA認証取得済み」と一括りに書きますが、認証は区分ごとです。電子取引データの保存が目的なら、見るべきは「電子取引ソフト法的要件認証」です。スキャナ保存の認証しか持っていない製品は、目的に対して証明になっていません。製品ページの認証ロゴの下にある区分名まで確認してください。

なお、令和7年度の税制改正で、請求書等のデータを自動で保存し帳簿へ自動連携する仕組みに関する制度が電帳法に新設され、JIIMAはこれに対応する「デジタルシームレスソフト法的要件認証」を新たに開始しています(JIIMA公式)。これから長く使う前提で選ぶなら、この区分に対応していく製品かどうかは見ておく価値があります。

2. 会計ソフトと分けるか、まとめるか

証憑を保存する専用ソフトと、会計ソフトを別々に入れると、証憑と仕訳がつながりません。「この10万円の支払いは何だったか」を後から追うとき、2つのソフトを行き来することになります。

私たちは税理士事務所向けに、決算書や試算表を読み込んで分析するツールを開発しています。その立場から見ると、数字から証憑にたどり着けない会社は、決算後の確認に時間がかかります。金額の異常値を見つけても、その中身を確認するのに日をまたぐからです。すでに会計ソフトを使っているなら、同じベンダーの電帳法機能を先に確認するのが結局は早いことが多いはずです。

3. 解約したあと、データは残るか

見落とされがちな点です。ソフトを解約しても、保存義務は消えません。クラウド型のサービスは解約後にデータが見られなくなるものがあります。契約前に次の2つを確認してください。

4. 入力する人が使えるか

電帳法対応ソフトは、社長ではなく現場の担当者が毎日触るものです。1日でも運用が止まると、その月は紙とデータが混在します。無料期間があるなら、実際に入力する人に1週間使ってもらってから決めるのが確実です。

ソフトのタイプ別の見取り図

タイプ向いている会社注意点
会計ソフトの電帳法機能を使うすでにクラウド会計を使っている会社プランによって使える範囲が違う。契約中のプランで使えるかを先に確認
証憑保存の専用サービス証憑の件数が多く、会計ソフトを変えたくない会社会計ソフトとの連携の有無で手間が大きく変わる
請求書受領サービス受け取る請求書が多い会社受領に特化しているため、領収書やネット取引の明細は別の置き場が要る
ソフトなし(フォルダ+規程)判定1または2に当てはまり、件数が少ない会社担当者が変わると運用が崩れる。ルールを紙で残す

まとめ:この順番で決める

  1. 判定する。2年前の売上高が5,000万円以下か、出力書面を日付・取引先ごとに整理して出せるか。どちらかなら検索要件は不要です。
  2. 件数を数える。月あたりの電子取引の件数を実際に数えます。判断はここで決まります。
  3. 買うなら、区分を見る。電子取引データが目的なら「電子取引ソフト」の認証。スキャナ保存の認証は別物です。
  4. 解約後を確認する。保存義務はソフトの契約より長く続きます。

比較表から入ると、どれも良く見えます。判定から入ると、選択肢は2つか3つに減ります。減らしてから比べてください。

関連記事:電子取引データ保存、2024年1月から何が変わったか/会計ソフトの乗り換え/記帳代行の料金

執筆

平澤 建(ひらさわ たける)

taXel 代表。中小企業向けにKPI経営の伴走支援とEC運用支援を行っています。 税理士の先生方へのヒアリングを重ね、いただいた要望をそのまま機能にする形でtaXelを開発しています。

※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。制度の内容は国税庁およびJIIMAが2026年9月24日時点で公開している情報に基づいています。費用の試算は説明のための仮定値です。筆者は税理士ではありません。自社の要件判定・適用関係は、顧問税理士または所轄税務署にご確認ください。

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