決算書の読み方|社長が最初に見る3つの数字(現預金・営業利益・借入金)
2026.11.02・平澤 建
「決算書を渡されたけれど、どこから見ればいいのか分からない」。社長からいちばんよく聞く声のひとつです。「決算書 読み方」で検索すると、貸借対照表・損益計算書・キャッシュ・フロー計算書の「三表の解説」が上位に並びます(2026年10月13日、筆者の検索結果)。三表の意味は分かっても、自分の会社の何を見ればいいのかまでは書かれていないことが多いのです。
この記事では、三表を全部読み込むのをやめて、社長が最初に見る数字を3つに絞ります。仮定値の計算例を使って、「数字を見つけて、前期と比べて、原因を1つ探す」ところまで進めましょう。
結論:最初に見るのは「現預金・営業利益・借入金」の3つ。すべて月商と前期で比べる
① 現預金 ÷ 月商 = 手元のお金が、売上の何ヶ月分あるか(貸借対照表と損益計算書)
② 営業利益 = 本業でいくら残ったか。前期より増えたか減ったか(損益計算書)
③ 借入金 ÷ 月商 = 借りているお金が、売上の何ヶ月分か(貸借対照表)
理由は、この3つで「いま安全か」「本業は稼げているか」「借金に頼っていないか」が分かるからです。ほかの数字は、この3つのどれかが気になったときに、原因を探すために開けば足ります。月商で割るのがポイントです。金額そのものは会社の規模で意味が変わりますが、「月商の何ヶ月分」にすると、前期の自社と比べられます。
決算書のどこに何が書いてあるか(最小限)
| 書類 | 分かること | 最初に拾う場所 |
|---|---|---|
| 貸借対照表 | 決算日時点で、お金を何で集め(負債・純資産)、何に使っているか(資産) | 現金預金、借入金(短期・長期) |
| 損益計算書 | 1年間の売上から費用を引いて、いくら利益が残ったか | 売上高、売上総利益、販管費、営業利益 |
| キャッシュ・フロー計算書 | 1年間にお金がどう増減したか | 中小企業では作っていない会社も多い。作っていなければ、現金預金の前期比で代用 |
決算書に出てくる「△」はマイナスの印です。「営業利益 △1,200,000」なら、本業で120万円の赤字という意味です。「▲」と書く会社もあり、どちらも同じ意味です。
計算例:月商800万円の会社で3つの数字を出す(数字はすべて仮定値)
実在の会社ではなく、説明のために置いた仮定値です。今期の売上9,600万円(月商800万円)、前期は9,000万円とします。
| 項目 | 前期 | 今期 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 9,000万円 | 9,600万円 | +600万円(+6.7%) |
| 売上総利益(粗利) | 3,150万円 | 3,360万円 | +210万円 |
| 販売費及び一般管理費 | 2,700万円 | 3,168万円 | +468万円(+17.3%) |
| 営業利益 | 450万円 | 192万円 | △258万円 |
売上は6.7%伸びているのに、営業利益は450万円から192万円へ、半分以下に減っています。社長が「売上は伸びたのに、手元にお金が残らない」と感じるのは、こういう決算です。差の理由は簡単に分かります。粗利は210万円増えましたが、販管費がそれを上回る468万円増えたからです(210−468=△258)。原因は粗利ではなく、販管費。ここまで分かれば、次に開くのは販管費の内訳(人件費、広告費、地代など)の1ページだけです。
貸借対照表の仮定値は、現金預金が2,400万円、借入金が3,600万円とします。
| 数字 | 計算 | 結果 |
|---|---|---|
| ① 現預金が月商の何ヶ月分か | 2,400万円 ÷ 800万円 | 3.0ヶ月分 |
| ③ 借入金が月商の何ヶ月分か | 3,600万円 ÷ 800万円 | 4.5ヶ月分 |
| 参考:借入金から現預金を引いた額 | 3,600万円 − 2,400万円 | 1,200万円(月商1.5ヶ月分) |
この会社は、手元に月商3ヶ月分のお金があります。一方で借入金は4.5ヶ月分。営業利益は半減しています。ここから読み取れる「次の一手」は、来期の販管費の増え方を止められるかです。営業利益が192万円のままだと、借入の返済に回せる余力が小さいためです。返済額が年に何万円なのかを借入明細で確認し、営業利益(と減価償却費)で賄えるかを、次に見ましょう。
3つの数字を前期と並べて見る手順
- 直近2期分の決算書を用意する。1期分だけでは、良いか悪いかは判断できません。
- 損益計算書で、売上高・売上総利益・販管費・営業利益の4つを拾う。上の表のように、前期と今期を並べます。
- 貸借対照表で、現金預金と借入金の合計を拾う。借入金は「短期借入金」「長期借入金」「1年内返済予定の長期借入金」を足します。
- 月商(売上高÷12)で割る。電卓で足ります。
- 前期から大きく動いた1つだけに、原因を探す。全部の項目を追うと途中で止まります。動いた1つに絞りましょう。
「月商の何ヶ月分が安全か」という目安は、業種や取引条件で変わります。たとえば、売上の入金が遅い業種は、手元のお金を厚めに持つ必要があります。自社の入金・支払いの条件は運転資金の計算で、先の資金の動きは資金繰り表の作り方で確認できます。まずは自社の前期との比較で、悪化した向きがないかを見るのが最初の一歩です。
税理士の先生が、社長への説明で丸めている理由
私たちはTaxelの開発で、税理士の先生に試作品を見ていただいています。ある先生からは、2026年5月のチャットで「社長に説明するときは簡易化が必須で、数字の羅列より、科目をまとめてグラフにしたほうが興味を持ってもらえる」という趣旨の指摘をいただきました。実際にその先生は、役員報酬・給与・賞与・社会保険料を「人件費」の1行にまとめて、社長に説明しているとのことでした(1名の先生の証言で、すべての先生に当てはまるとは限りません)。
社長が決算書を読めないのは、能力の問題ではなく、書式が会計の専門家に向けて作られているからです。人件費が何本にも分かれた表を上から読むより、まとめて前期と比べたほうが、変化に気づけます。ご自身で見るときも、この「まとめて前期比」を真似してください。たとえば販管費なら、人件費・広告費・地代家賃・その他、の4つに寄せて増減を出すだけで、先ほどの468万円の中身が見えてきます。
決算書の数字は、会計ソフトからPDFで出して使う
決算書を銀行や、補助金の申請先、経営分析のサービスに渡す機会は増えています。私たちが開発しているTaxelでも決算書を読み込みますが、その際に取得経路で精度が変わることが分かりました。同じ決算書でも、会計ソフトから直接出力したPDFと、紙をスキャンしたPDFで、読み取りの結果が違ったのです。2026年9月28日時点の測定(5社・17冊)では、ソフト出力のPDFは58項目すべて正確、スキャンは88項目中85項目で、毎回1〜3項目、違う箇所で読み違えがありました。サンプルが少ないため、統計的な保証はありません。傾向を示す参考値です。
人が目で読む場合も同じことが言えます。スキャンした紙は、桁や「△」が潰れて読めなくなることがあります。決算書は紙ではなく、会計ソフトからPDFで出力した原本を保存しておきましょう。
まとめ:今日やること3つ
- 直近2期の決算書から、営業利益・現金預金・借入金を拾う。月商(売上÷12)で割り、「月商の何ヶ月分」を出します。
- 営業利益が前期より減っていたら、粗利と販管費のどちらが動いたかを1行で書く。原因が粗利なら売上と原価、販管費なら内訳の1ページだけを開きましょう。
- 決算書のPDFを、会計ソフトから出力して保存する。次の面談や融資の相談のときに、そのまま使えます。
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執筆
平澤 建(ひらさわ たける)
Taxel 代表。中小企業向けにKPI経営の伴走支援とEC運用支援を行っています。 税理士の先生方へのヒアリングを重ね、いただいた要望をそのまま機能にする形でTaxelを開発しています。
※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。計算例は仮定値であり、実在の会社を示すものではありません。「月商の何ヶ月分」の目安は業種・取引条件で異なります。先生の発言は2026年5月のチャットでの趣旨で、1名の証言です。読み取り精度の数値は自社開発ツールでの測定で、サンプル数が少ないため統計的な保証はありません。筆者は税理士ではありません。