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社長向け お金の使い方

税理士の顧問料相場|月3万円に何が入っていて、何が入っていないか

2026.09.24・平澤 建

「税理士 顧問料 相場」で検索すると、金額表がずらりと並びます。法人なら月3〜5万円、個人事業主なら月1〜3万円、決算料は別途。数字はどのページもほぼ同じです。

ただ、社長が本当に知りたいのは金額そのものではないはずです。「うちが払っているこの金額は、高いのか安いのか」。つまり、払った額に対して何が返ってきているのか。相場表はそこに答えません。

この記事では、相場を確認したうえで、月3万円の中身を時間に分解します。何が入っていて、何が入っていないのか。それが分かると、値段の話は「高い・安い」ではなく「中身を組み替えるかどうか」の話に変わります。

結論:月3万円は「守り」の値段。未来の数字は入っていない

先に結論です。相場どおりの顧問料に含まれているのは、過去の数字を正しく確定させる仕事です。記帳のチェック、試算表、決算書、申告書。税務署に対して間違いのない状態を作る仕事で、これは会社にとって不可欠なものです。

一方、これから先の数字をつくる仕事は、相場の中には入っていません。来期の資金繰り表、融資を通すための事業計画、打ち手を打った場合の利益シミュレーション。これらは工数がかかるうえ、標準的な顧問料の前提に含まれていないからです。

だから、「顧問料が高い気がする」と感じている社長の多くは、実は金額ではなく中身の配分に違和感を持っています。以下、順に見ていきます。

1. まず相場:各社が公開している目安を横に並べる

2026年9月時点で検索上位に出てくる税理士法人・税理士紹介サイトが公開している目安を並べると、次のようになります。金額に幅はありますが、方向は一致しています。

項目公開されている目安出典(2026-09-24 閲覧)
法人の月額顧問料月3〜5万円(年商規模で変動)永安栄棟 公認会計士・税理士事務所、Leapal会計事務所 ほか
個人事業主の月額顧問料月1〜3万円税理士法人ISJ、永安栄棟 公認会計士・税理士事務所
決算・申告料(別途)月額顧問料の約4〜6ヶ月分税理士紹介センタービスカス、Leapal会計事務所
訪問頻度による差年1回訪問→毎月訪問(年12回)で年間15.6万円増辻・本郷 税理士法人(2024-11-05 公開)

この表から読み取れることが2つあります。

1つ目。決算料は月額の4〜6ヶ月分なので、年間の総額は「月額×16〜18ヶ月分」で見ないと実額を外します。月3万円の契約なら年間48〜54万円です。月額だけで他社と比べると必ずズレます。

2つ目。金額差のほとんどは「会う回数」で説明がつきます。辻・本郷税理士法人が示す年間15.6万円の差を訪問1回あたりに直すと、およそ1.4万円です(15.6万円÷11回。筆者による計算)。相場表の幅は、仕事の質の差というより、接触回数と年商規模の差だと読むほうが実態に近いはずです。

2. 月3万円の中身を、時間に分解する

ここからが本題です。月3万円という金額を、事務所側の時間で割り戻してみます。

会計事務所の作業単価を、仮に1時間8,000円と置きます(税理士本人ではなく、担当スタッフを含めた事務所全体の平均として)。すると月3万円で買えているのは、月およそ3.7時間ということになります。決算料を年間に足し戻しても、月あたり5時間前後です。

※ 試算の前提:時間単価8,000円は筆者が置いた仮定値であり、公表統計ではありません。実際の単価は事務所の人員構成と地域で変わります。ここでは「金額を時間に翻訳すると何が見えるか」を示すための概算として使っています。

月5時間で何ができるか。仕訳の確認、試算表の作成、月次の資料送付、電話やメールの対応。ここまででほぼ埋まります。残りの時間で、御社の3年後の資金繰りを設計することはできません。物理的に入らないのです。

これは税理士の怠慢ではなく、値付けの構造です。私たちは税理士の先生方へのヒアリングを10回重ねてきましたが、そこで一貫して出てきたのが「顧問料3万円の壁」でした。月3万円前後の契約では、記帳のチェックと申告書の作成で稼働が埋まる。踏み込んだ経営助言まで手が回らない。先生方自身がそう言っています。

3. 確認すべきは金額ではなく「入っている業務」

値段が適正かどうかを判断するには、契約書か見積書を出して、次の表を自分で埋めるのが一番早い方法です。

業務いまの契約相場の顧問料に通常入るか
仕訳の入力(記帳代行)□ 自社 / □ 税理士別料金のことが多い
月次試算表の作成・送付□ あり / □ なし入る
決算書・法人税申告書の作成□ あり / □ なし決算料として別途
年末調整・法定調書□ あり / □ なし別料金のことが多い
税務調査の立会い□ あり / □ なし別料金(日当)が一般的
来期の資金繰り表の作成□ あり / □ なし入らない
融資・補助金のための計画書づくり□ あり / □ なし入らない
打ち手を打った場合の利益シミュレーション□ あり / □ なし入らない

下の3行に「なし」が並んだ場合、それは契約どおりです。入っていないものが出てこないのは当たり前で、先生に落ち度はありません。問題が起きるのは、社長側が「顧問税理士がいるのだから、そのくらいは見てくれているはずだ」と思い込んでいるときです。

「期待していたのに出てこない」が一番高くつく

日本の中小企業では、社長が税理士に対して、税務の枠を超えた相談役の役割を期待していることが多くあります。一方で、標準的な顧問契約はその役割を前提にしていません。この期待と契約のズレが、「顧問料が高い」という感覚の正体であることがよくあります。

ズレを埋める方法は2つしかありません。期待を契約に合わせて下げるか、契約を期待に合わせて作り直すか。後者を選ぶなら、追加の費用がかかることを先に受け入れる必要があります。同じ金額のまま仕事だけを増やしてもらうことはできません。

4. 値上げを打診されたときに確認する3点

近年は人件費やソフト費用の上昇を理由に、顧問料の改定を打診されるケースが増えています。言われたときに確認することは3つです。

  1. 金額ではなく、増える業務を聞く。「いくら上がるか」より「何が増えるか」。増える業務がないなら、それは値上げではなく単価の改定です。単価改定にも正当な理由はあり得ますが、話の前提が違います。
  2. 減らせる業務がないかを聞く。記帳を自社に戻す、訪問を隔月にするといった組み替えで、金額を据え置ける場合があります。値下げをお願いするより、業務の組み替えを提案するほうが通ります。
  3. 上げるなら、上がったぶんで何が出てくるかを決める。「来期の資金繰り表を毎月もらう」など、成果物の名前で合意します。姿勢や体制ではなく、紙で出てくるもので決めるのが確実です。

5. 相場を超える金額を払う価値があるのは、どんなときか

税理士の先生方へのヒアリングで、2026年9月に行った独立した2件の面談から、同じ結論が出たことがあります。融資や補助金の場面で、現状維持の計画書は通らない。ところが、将来の数字を作る作業は、税理士も社長も手を出したがらない。結果として、そこだけがぽっかり空いている、という指摘でした。

これを社長側から見ると、こういうことです。

相場を超えて払う価値があるのは、「未来の数字」を作ってもらうときだけ。
過去の数字を確定させる仕事は、相場の金額で買えます。ここに上乗せしても、返ってくるものは大きく変わりません。
一方、来期の資金繰り、融資が通る計画、打ち手ごとの利益予測は、相場の中に入っていません。ここは追加で払う価値がある領域です。

逆に言えば、「顧問料を上げたのに何も変わらない」という不満のほとんどは、上げたあとに出てくる成果物を決めていないことが原因です。金額を先に決めて、中身を後回しにすると、ほぼこうなります。

6. 「資料を作る作業」の値段は、これから下がる

最後に、値段の前提そのものが動いていることに触れておきます。

私たちは税理士事務所向けに、決算書から財務分析と提案を自動生成するツール(taXel)を開発しています。開発の中で実測した処理時間は、1回あたり約5分です。人が同じ資料を手で作れば数時間かかります。

これが意味するのは、「数字を並べた資料を作る」という作業そのものの値段は、これから下がっていくということです。だとすれば、顧問料の中身も変わります。資料を作ることではなく、その資料を見て何を決めるかを一緒に考えること。そこに値段がつく方向に動いていきます。

社長側の行動としては、こうなります。いま払っている金額を下げる交渉をするより、いま出てきている資料の中身を変えてもらう交渉をするほうが、得られるものは大きいです。「試算表に、来月末の現金残高の予測を1行足してもらえませんか」。この1行から始めるのが、一番通りやすい頼み方です。

まとめ:今日やること3つ

  1. 年間の総額を出す。月額×12+決算料。月額だけで比較すると必ずズレます。
  2. 契約書を出して、上の表を埋める。入っていない業務を「入っていない」と確認するだけで、不満の半分は消えます。
  3. 足したいものを1つだけ決める。資金繰り予測でも、業種平均との比較でも構いません。1つに絞って先生に伝えるのが、一番早く動きます。

顧問料は、金額の問題ではなく配分の問題です。相場表を見に来た方が、契約書を見に行って終われば、この記事の目的は達成です。

関連記事:記帳代行の料金/役員報酬の決め方/税理士との面談で聞く質問

執筆

平澤 建(ひらさわ たける)

taXel 代表。中小企業向けにKPI経営の伴走支援とEC運用支援を行っています。 税理士の先生方へのヒアリングを重ね、いただいた要望をそのまま機能にする形でtaXelを開発しています。

※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。金額の目安は各社が公開している情報を2026年9月24日時点で参照したもので、実際の料金は事務所ごとに異なります。時間単価による分解は筆者の試算です。筆者は税理士ではありません。個別の契約・税務のご判断は、顧問税理士にご確認ください。

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