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社長向け 決算書の基本

損益分岐点の計算|決算書から固定費と変動費を分け、返済まで含めた「お金の分岐点」も出す

2026.11.02・平澤 建

「損益分岐点 計算」で検索すると、「損益分岐点売上高=固定費÷(1−変動費率)」という計算式と、その計算例が上位に並びます(2026年11月2日、筆者の検索結果)。式は正しく、覚えるのも難しくありません。ところが、いざ自社の決算書で計算しようとすると、2つのところで手が止まります。どの科目を固定費にし、どれを変動費にするのか。そして、計算した分岐点を超えているのに、なぜお金が残らないのか。

この記事では、決算書の科目を固定費と変動費に分ける手順と、借入金の返済まで含めた「お金の分岐点」の出し方を、仮定値の計算例で説明します。最後に、分岐点を下げる打ち手を金額で比べるところまで進めましょう。

結論:分岐点は2本出す。「利益の分岐点」と「お金の分岐点」

この記事で出す2つの数字

① 利益の分岐点(損益分岐点売上高)= 固定費 ÷ 限界利益率

② お金の分岐点 =(固定費 − 減価償却費 + 借入金の元金返済)÷ 限界利益率

①は、会計上の利益がゼロになる売上です。②は、借入金の返済まで済ませたうえで、手元のお金が減らない売上です。減価償却費は費用ですがお金は出ていかないので引き、元金返済は費用ではないのにお金が出ていくので足します(法人税などの税金は、ここでは考えません)。借入金がある会社は、①を超えていても②を下回ると、手元のお金が少しずつ減っていきます。

計算の前に:決算書の科目を「固定費」と「変動費」に分ける

変動費は売上に比例して増える費用、固定費は売上がゼロでもかかる費用です。会計の世界では、勘定科目ごとにどちらかへ振り分ける方法を「勘定科目法」と呼びます。中小企業なら、まずこの方法で十分です。

区分主な勘定科目迷いやすい点
変動費商品仕入・材料費・外注費(売上に連動するもの)・販売手数料・荷造運賃売上原価に含まれる人件費(製造業・建設業の労務費)は変動費に入れない
固定費役員報酬・給料手当・賞与・法定福利費・地代家賃・リース料・減価償却費・支払利息人件費は役員報酬から社会保険料まで1行にまとめると、後で比べやすい
どちらとも言えない水道光熱費・消耗品費・広告宣伝費・旅費交通費迷ったら固定費に入れる。分岐点が高めに出るので、判断は安全側になる

いちばん多い間違いは、売上原価をまるごと変動費にしてしまうことです。製造業や建設業では、売上原価の中に工場や現場の人件費(労務費)が入っています。これは売上が減っても払う費用なので、固定費です。製造原価報告書(工事原価報告書)がある会社は、そこから労務費を抜き出して固定費に移しましょう。

人件費をまとめる点は、私たちがTaxelの開発でヒアリングした税理士の先生から、2026年5月にいただいた指摘がもとになっています(1名の証言です)。社長に数字を説明するときは、役員報酬・給与・賞与・社会保険料を「人件費」の1行にまとめて見せたほうが伝わる、という趣旨でした。固定費の中身を見るときも、人件費・家賃・減価償却・その他の4行程度に丸めると、どこを動かせるかが見えやすくなります。

計算例:分岐点比率90%の会社。返済を入れると97.5%(数字はすべて仮定値)

年商1億2,000万円(月1,000万円)の会社で計算してみます。

項目金額(年)メモ
売上高1億2,000万円月1,000万円
変動費(仕入・外注・運賃)7,200万円変動費率 60%
限界利益(売上−変動費)4,800万円限界利益率 40%
固定費:人件費2,640万円役員報酬・給与・賞与・法定福利費
固定費:地代家賃480万円
固定費:減価償却費240万円お金は出ていかない費用
固定費:その他960万円支払利息を含む
固定費 合計4,320万円
利益(限界利益−固定費)480万円
借入金の元金返済600万円損益計算書には出てこない

① 利益の分岐点=4,320万円÷40%=1億800万円(月900万円)。今の売上に対する比率(損益分岐点比率)は1億800万÷1億2,000万=90%です。売上が10%落ちるまでは赤字になりません。この「10%」を安全余裕率と呼びます。

② お金の分岐点=(4,320万円−240万円+600万円)÷40%=4,680万円÷40%=1億1,700万円(月975万円)。比率は97.5%です。

帳簿の上では10%の余裕があるのに、返済まで含めると余裕は2.5%、月にすると25万円しかありません。売上が3%落ちた月から、手元のお金は減り始めます。「黒字なのにお金が増えない」と感じる会社は、まずこの2本目の数字を出してみてください。

ある先生からは2026年9月に、融資や補助金の場面では「今のまま続ける」計画では通らない、という趣旨の話も聞いています(1名の証言です)。金融機関に計画を見せるときも、返済を含めた分岐点を超える売上の見込みを、根拠つきで示すことが出発点になります。

目標の利益から、必要な売上を逆算する

同じ式で、目標の利益を出すための売上も出せます。

必要な売上 =(固定費 + 目標利益)÷ 限界利益率

計算例の会社が利益1,000万円を目標にすると、(4,320万円+1,000万円)÷40%=1億3,300万円。今より1,300万円(約11%)の増収が必要です。月にすると約108万円の上乗せです。この数字を見て「売上で1,300万円は難しい」と感じたら、次の章の打ち手に移りましょう。

分岐点を下げる3つの打ち手を、金額で比べる

分岐点を動かす方法は3つしかありません。売上を増やす、変動費率を下げる、固定費を下げる。どれが効くかは、金額に直して比べると判断できます。

打ち手(仮定)計算利益の分岐点利益への効果(年)
変動費率を60%→58%(仕入先との条件交渉などで2ポイント)4,320万÷42%約1億286万円(−514万円)+240万円
固定費を240万円減らす(月20万円)4,080万÷40%1億200万円(−600万円)+240万円
売上を2%増やす(変動費率は同じ)4,320万÷40%変わらず1億800万円+96万円

この会社では、売上を2%伸ばすより、変動費率を2ポイント下げるほうが2.5倍効きます。限界利益率が40%なので、増えた売上のうち利益に残るのは4割だけだからです。逆に、限界利益率が高い業種(サービス業など)では、売上を伸ばす打ち手の効きが大きくなります。自社の限界利益率を知ることが、打ち手の順番を決める近道です。

打ち手を決めたら、「誰が・いつまでに・何をするか」まで1行で書きましょう。変動費率なら「仕入額の大きい3社について、今月中に見積もりを取り直す」、固定費なら「毎月の支払いのうち、使っていない契約を今週洗い出す」といった具合です。

月次で回すときの注意

まとめ:今日やること3つ

  1. 直近の決算書で、費用を変動費と固定費に分ける。売上原価の中の労務費は固定費へ。迷った科目は固定費に入れましょう。
  2. 利益の分岐点とお金の分岐点を、2本とも出す。元金返済額は、借入金の返済予定表か通帳で確認できます。
  3. 分岐点を下げる打ち手を3つ並べ、金額の大きい順に1つ選ぶ。選んだ打ち手には、担当と期限を付けましょう。

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執筆

平澤 建(ひらさわ たける)

Taxel 代表。中小企業向けにKPI経営の伴走支援とEC運用支援を行っています。 税理士の先生方へのヒアリングを重ね、いただいた要望をそのまま機能にする形でTaxelを開発しています。

※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。計算例は仮定値であり、実在の会社を示すものではありません。計算例では法人税等の税金を考慮していません。筆者は税理士ではありません。

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決算書をお送りいただくと、費用を固定費と変動費に分け、利益の分岐点と返済まで含めたお金の分岐点を出してお返しします。